解説付 臨床工学技士国家試験 第36回 午後:第55問

AD変換について正しいのはどれか。3つ選べ。

a: フラッシュ型AD変換器は高速変換に不向きである。

b: 量子化ビット数を増やすと量子化誤差が小さくなる。

c: 10kHzの信号を20kHzより低い周波数で標本化すると、元の信号を復元できない。

d: 多チャンネル同時AD変換には、標本化保持(サンプルホールド)回路を用いる。

e: LSBに対応した電圧が大きいほど量子化誤差が小さい。

A/D変換はアナログ信号の振幅を離散的な周期で切り出し、符号で表されたデジタル信号に変換していく。 A/D変換されたデジタル信号のビット数を分解能、最上位ビットをMSB(Most Significant Bit)、最下位ビットをLSB(Least Significant Bit)という。下のグラフはアナログ信号(入力)とデジタル信号(出力)の関係を示したもの。デジタル信号の差として判別できるアナログ信号の最小振幅が最小分解能(=1LSB)であり、アナログ信号とデジタル信号の間で生じる誤差を量子化誤差という。
デジタル信号に変換していく一連のステップは「標本化→量子化→符号化」となる。
(標本化)
連続なアナログ信号の振幅値を離散的な周期 (サンプリング周期:Ts) で切り出す。標本化を行う回路をサンプル&ホールド回路(略してS&H回路)という。<サンプリング周期:Ts=1/(サンプリング周波数:Fs)>
(量子化)
離散的な周期で切り出された振幅値を、離散的な振幅値に近似する。<量子化誤差:(標本化した値)-(量子化した値)>
(符号化)
離散的な振幅値を”0″と”1″の2値で表す符号に変換する。符号に変換する回路をエンコーダ(Encoder)という。

a:フラッシュ型AD変換器とは、アナログ信号を一度にデジタル信号に変換するため、アナログ信号を標本化する回路が不要となる。A/Dコンバータ基本形の中で最も高速に変換可能である。Nビットの分解能では2N-1個の比較器が必要となり、回路規模や消費電力が大きくなってしまうため、分解能は8ビット程度が限界である。

b:正解。量子化ビット数がNであるとき、入力電圧2Nに分割されるため、量子化ビット数が大きいほど分解能が高い。

c:正解。元の信号を復元できるようにAD変換するためには、標本化定理により信号に含まれる最大周波数の2倍以上の標本化周波数が必要である。

d:正解。A/Dコンバータは、アナログ値をデジタルデータに変換するが、アナログ値は常に変化しているので、変換開始時と変換終了時で値が変化してしまうと、正しい値を得られなくなる。そのため、変換開始時の値を保持する必要がある。そのためにサンプル&ホールド回路やトラック&ホールド回路が必要となる。サンプル&ホールド回路の場合、サンプリングした時点の入力信号の値は次のサンプリング時点まで保持されるが、トラック&ホールド回路の場合、A/D変換している間だけ値を保持し、すぐに入力信号を追随できる。

e:LSBに対応した電圧が小さいほど量子化誤差が小さくなる。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
kohをフォローする
スポンサーリンク
臨床工学技士 国家試験 過去問
error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました